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Channel: バレエ忘備録
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『トランスシベリア芸術祭』~パ・ド・ドゥ for Toes Fingers ~

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2016.6.17 ~サントリーホール

完成された構成、そして

完璧な進行。

正味1時間20分そこそこの間に、なんとザハロワ様で5演目。ほとんど早変わりも、衣装も髪型も完璧なチェンジ。

完璧な夜でした(長すぎる冒頭の日露セレモニーを除いて)。完璧なバレリーナ、完璧な人生。

ザハロワ様と、その夫で世界的バイオリニストであるワディム・レーピンによる、最強の競演。


サントリーホールに着くと、まずは入り口で賑やかなこんなコンサートには来そうもない雰囲気の鈴木宗男議員の姿。

「ロシアだから??」と中に入ると、そこはさらにロシアロシアで、関係者いっぱい。

司会嬢?にアテンドされたVIP招待客(和服姿の令夫人も)の他にも、和服姿いっぱい、セットした盛り髪のドレスアップ姿もチラホラで、何だろう?と思っていたら、

[日ロ国交回復60周年ー新生ロシア連邦25周年 ロシア文化フェスティバル 2016 IN JAPAN]

のオープニングなのだそう。

総合プログラムを見ると、終演後に隣接するANAインターコンチネンタルホテルでレセンションがあるとのこと。

ロシア文化フェスティバルは1月のミハイロフスキー・バレエからスタートしてますが、この舞台がオープニングという扱いで、客筋にゴージャスな方々も多いわけです。

チェロ奏者のミーシャ・マイスキーも客席にいました。そこだけホグワーツの魔法学校みたいな雰囲気(笑)

冒頭にあったセレモニーでは、高村元外務大臣と、ロシア側からは総領事だったかしら?もう忘れちゃったけど、それぞれのスピーチと安倍総理からの祝辞が通訳と合わせて2倍になり、これだけで25分経過。

長すぎて退屈だったので、ずっと手元のプログラム読んでた。

壇上のVIPが関係者席に着いてようやく開演のところ、どうも席が一つ足らなかったらしく、紋付き袴姿の日本舞踊の花柳氏が後ろに回られたりなど、モタモタする場面も。

主催側、段取りが悪ーい・笑

実は私の前が関係者席の最後列だったようで、ちょうど空いていたのですよ。こんな場合のための予備席でしょうに。でもurikoは視界良好でラッキー☆

そこからは緊張が途切れることなく、ラストまで一気に進行していきます。


◇ 『Distant Cries』

振付:エドワード・リアン
バレエ:スヴェトラーナ・ザハーロワ、ミハイル・ロブーヒン
ヴァイオリン:ワディム・レーピン

アルビノーニのオーボエ協奏曲を、バイオリン独奏版に編曲。

冒頭は無音でザハロワのソロ、やがて静かにレーピンが登場して音楽が始まり、ロブーヒンが登場してデュエット開始。

やがてロブーヒンが去り、レーピンが去って無音の中、ザハロワのソロで終了。

薄グレーのノースリーブのワンピース姿のザハロワの、圧倒的な身体能力、長い手足の美しいこと。

そしてクラシックで心地よい曲の、レーピンのバイオリンの伸びやかで美しいことといったら!shine

ただ、ザハロワのソロで、頬をペチ、ペチ、とする振付が、いつも思うけど不思議……

◇ メンデルスゾーン:ヴァイオリンと弦楽のための協奏曲 二短調より 第2、3楽章

ヴァイオリン:ワディム・レーピン

◇ 『Plus. Minus. Zero』

ペルト:フラトレス
振付:ウラジーミル・ヴァルナヴァ
バレエ:スヴェトラーナ・ザハーロワ、ウラジーミル・ヴァルナヴァ
ヴァイオリン:ワディム・レーピン

マリインスキー・ファンには馴染みの深い、ヴァルナバの振付作品。

彼は2014年に自身の振付作品で、「男性ダンサー」としてゴールデンマスク受賞しています。実は踊りもとっても上手。

初演時には黄色のワンピースに灰色のスパッツ、三つ編みというガーリッシュ過ぎる衣装だったのが、今回は赤紫のトップに濃紺のスカート、スパッツというシックな練習着風に変更。

ここまできて驚いたのが、わりとよくあるコンテにもかかわらず、背景の音楽がーー!

素晴らしいのです。レーピンのバイオリン。

サントリーホールの宝石箱系のキラキラ音響で、レーピンの華麗なストラディバリウスの弦が響くと、作品の鮮やかさが全く違ってくるのですね。

バレエ公演の伴奏についてはわりと二重基準なところって正直あると思いますし、私も音を外したり、ぱっふぉんとスカをやらなければ「良かったですー」と書きまくってますが、

この日は掛け値なしの本物、それぞれが超一級品、

その相乗効果、すばらしいです。

◇ クライスラー:中国の太鼓
ヴァイオリン:ワディム・レーピン

◇ 『Revelation(ジョン・ウィリアムズ:シンドラーのリストより)』
振付:平山素子
バレエ:スヴェトラーナ・ザハーロワ
  ※録音演奏

ザハロワが女神

ただ、録音音源のショボさが目立ったかもしれません。思わぬ盲点。他が良すぎて。


◇ チャイコフスキー:『レンスキーのアリア』
バイオリン:ワディム・レーピン

◇ モンティ:チャールダーシュ
ヴァイオリン:ワディム・レーピン
フェスティバル・アンサンブル

◇ 瀕死の白鳥(サン=サーンス:白鳥)
振付:ミハイル・フォーキン
バレエ:スヴェトラーナ・ザハーロワ
ヴァイオリン:ワディム・レーピン

女子の夢。ドリーム。でもこれはザハロワにとっては、紛れもなくリアル。

男性バレエダンサーが三人いて、なお最もステキ(と、姫は絶対に思っているハズ)な、世界的バイオリニストの夫、

バイオリンを弾く男性ってそれだけで素敵なのに、190センチに届く偉丈夫で立ち姿も凛々しく、かつ一流の才能。

白鳥のチュチュ姿のザハロワと並んで遜色ないどころかバッチリお似合いって、つまりは‘美形バイオリニスト’ってことよね?!と、

まあレーピンの場合は実力が本物なので、そんな呼ばれ方はしないのですけど。

ザハロワがそんな彼に全幅の信頼を置き、彼のストラディバリウスの音に安心しきって身を委ねて踊る様子は、思いのほか軽やかで、

ファンとしては新たな発見。

ロパートキナの『瀕死の白鳥』とは鑑賞ポイントの違う、別な世界観をもつ独自の『瀕死の白鳥』だったと思います。

作品を見るというより、二人の作り上げる世界、ザハロワのリアルをうっとりと仰ぎ見る感じ。

厳しく自己に収斂していくロバ様より、さらに厳しいと思っていたザハロワが、意外にも他者に寄り添って、ゆったりアッサリしていたのです。

はあ。もう、ため息。lovely

◇ ポンセ(ハイフェッツ編):エストレリータ
ヴァイオリン:ワディム・レーピン

◇ 『レ・リュタン』より(抜粋) バッジーニ:妖精の踊り op.25
振付:ヨハン・コボー
バレエ:スヴェトラーナ・ザハーロワ
      ドミトリー・ザグレビン、ミハイル・ロブーヒン
ヴァイオリン:ワディム・レーピン

冒頭に、ロブーヒンとレーピンのコント?有り。

ロブーヒン : オハヨウゴザイマス!

レーピン : オハヨウゴザイマス (ちょっと忘れた)

ロブーヒン : バイオリン、ジョウズデスネ!(オイコラ笑)

レーピン : キミモヒイテミル?

ロブーヒン : アナタモオドッテミル?(このへんもうろ覚え)

二人でステップ踏んだり足を上げてみたり、でもレーピンはすぐに腰を抑えて

アイタタタ……

みたいなジェスチャーで、てへぺろな感じが会場に大ウケ。

ロブーヒンの発音がビックリするほど明瞭でよく通る美声で、サントリーホールに響いてました。

腹筋の違いかしら?笑

ここでザクレービンが登場し、あくまで品よく、飛んで回って大活躍。

黒いパンツに白シャツ、首に赤いチーフ巻いたキュートな装いのザハロワが登場すると、

妖精の女王様と、家来たち(レーピン含)

の様相となり、もう可愛らしくって会場大盛り上がりです。


フィナーレでは、ザハロワがレーピンの耳元に悪戯っぼく何か囁き、次にロブーヒンらにも同様にヒソヒソ、

ええ、台本の筋書き通りというのは丸わかりなんですけどね、ザハ様の小芝居ってだけでもう有り難くって、

再びレーピンの「チャルダッシュ」が始まると、それぞれお祭り仕様のテクニック合戦に突入。

ザハロワ様の高速フェッテからは会場が手拍子で一体化して、レーピンのバイオリンが聞こえなくなるほどの賑やかな祝祭感の中で、グランドフィナーレを迎えました。

一階は総立ちのスタンディングオベーション。

レーピンは『トランスシベリア芸術祭』の日本公演について、ロシアメディアのインタビューで、「祝祭感を大切にしたい」みたいなことを言っていたんですね。

その言葉通り、余裕たっぷりの、いつもより軽やかで遊び心いっぱいの演奏だったと思います。特に、ポンセやチャルダッシュ。

この大らかさ、やわらかさ明るさ、余裕や遊び心といったものは、いずれもザハロワに欠けていると思われるもので、それらを補完する理想的な関係、理想のカップルだと思いました。

まあ、ザハロワの夫と言われるのは大変だろうと勘繰ったりもするわけですが、

「仕事で輝いてる奥さんが好き」

という世界最強クラス、それがレーピンなのねきっと。

ザハロワ様が尻に敷いてる感は否めませんが(笑)、ザハ様のお尻って骨と皮だけだし、

度量の広い、フカフカの敷物を見つけて、ザハ様お幸せねーーという感じです。


最後に、表題の『パ・ド・ドゥ for Toes & Fingers』、ザハロワの美しい曲線のトウと、ストラディバリウスを奏でる指、ということで、

もうどこまでもいっても完璧な二人、

それをさらーっと空気のように見せてくれた舞台でした。充実した1時間20分でした。


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